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おんせんへでかけたすずめ

温泉へ出かけたすずめ

小川 未明

「赤い鳥」1928(昭和3)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,988 字 · 10 页

青空文庫

さすがに、からすは、すずめの苦しそうなようすが目にとまると、

「すずめさん、いいことを教えてあげます。この寒さでは、傷はなかなかなおりません。あの山を越えて、西南にどこまでも、下を見て、飛んでいきますと、白い湯気の立ち上がっている温泉があります。そこへいって、入れば、じきに、それくらいの傷はなおってしまいます。」

「人間のはいる温泉ですか? 私などが、そこへ入れましょうか。」と、すずめは、からすを見上げました。

「温泉は、なにも人間だけがはいるものと、きまってはいません。それに、このごろでは、人間はだれもいなかろうと思います。まあ、とにかくいってごらんなさい。」と、からすはいいました。

すずめは、その夜は、そこで、まんじりとも眠れませんでした。夜が、白々と明けると、からすに聞いた温泉へいこうと思って、苦しい旅をつづけたのです。

雪を頂いた、白い山を越して、すずめは、温泉にあこがれて飛んでいきました。からすのいったことは、うそではなかった。あちらの林に休み、こちらの森におりて、その方へ飛んでいくうちに、日の暮れかかる前に、谷間から白い湯気の立ち上る、温泉を見つけたのでした。