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おんせんへでかけたすずめ
温泉へ出かけたすずめ
小川 未明
「赤い鳥」1928(昭和3)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,988 字 · 10 页
「いやになってしまうな。」と、すずめはため息をついた。
すると、電線が、風の中で、笑いました。
「なにをそんなに、考えこんでいるのですか?」といった。
「いえ、あちらの方をごらんなさい。私は、しばらくほかへいっていたのですが、また、あの暗いところへ帰らなければならぬかと思うと、いやになってしまうのです。」と、すずめは答えた。
電線は、寒そうに、身をふるわしながら、
「なにも、いやだと思うところへ帰らなくったっていいじゃありませんか。いくらも、暮らしいいところはありますよ。南の方へいってごらんなさい。そして、山一つ越せば、雪がないということを、ここを通る汽車が、話しましたよ。」と、電線はいいました。
「それは、ほんとうですか?」
「なんで、あの正直で、働きものの汽車が、うそをいうものですか……。」
すずめは、南の方をぼんやりながめた。その方は、なるほど空が明るくて、ほんとうに、おもしろいことが、たくさんあるような気がしました。
「いいことを教えてくださって、ありがとうございます。」と、すずめは、お礼をいって、自分の古巣へは帰らずに、南の方の空をさして、飛んでいきました。