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ゆしまもうで

湯島詣

泉 鏡花

「湯島詣」春陽堂、1899(明治32)年11月23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,004 字 · 122 页

青空文庫

「御存じの筈ですが、神月さんといやあお前さん、」

「可いよ。」

「宜しくばお止めになさいまし。」と大いに澄し、顔を見合せて黙りとなった。

「富ちゃん、」

「そら、また富ちゃんだ。」といって円輔は、敷居の処まで来て立っている雛妓を見て屹と目で知らせた。

「私は知らないの。」

しばらくして、声も優しく、

「いいえ、小包さあ、」

「本当だってば、何を疑るんだな。」と源次は大真面目でいる。

「嘘ばッかり、」といいながら、ちょいとためらった様子であったが、階子段がトンと鳴った。

下から仰山に遮って、

「ちょいとお待ちなさい、お蝶さん、請取がいりますぜ、いらっしゃるなら、どうぞ、御懐中物を御持参で、」

「宜しい、」と男らしく派手に爽にいった。これを機掛に、蝶吉は人形と添寝をして少し取乱したまま、しどけなく、乱調子に三階から下りて来て、突然、

「どこにさ、」と嬰児の強請るようにいいながら、人前を澄した顔。

「気が疾いな、どうも、師匠出してやりたまえ。」

「まずお受取を頂戴いたしたいような訳で。」

「すッかり負けて来たんですからたんとはなくッてよ。」

「豪い!」といいさま、小紋縮緬で裏が緞子、同く薄ッぺらな羽織を飜りと撥ねて、お納戸地の帯にぐいとさした扇子を抜いて、とんと置くと、ずっと寄って、紙幣を請取り、