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げんぞうがはら
源蔵ヶ原
山本 周五郎
「週刊文春」文藝春秋新社、1962(昭和37)年12月17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,843 字 · 28 页
のか知らない、けれども、いちばん辛いのはおれなんだぜ、みんなにとっては向う河岸の火事だろう、痛くも痒くもないだろう、だがおれにとっては」
「泣き言を聞こうというんじゃねえ」と忠太がきめつけた、「どうしてこんなことになったか、おれたちは本当のわけが知りてえんだ」
「もういいだろう」と市三が云った、「云えねえものを諄くきいてもしようがねえ、この辺でけりをつけようじゃねえか」
「そうだな」と宗吉が云った、「そのほかにしようはねえらしい、出ようぜ」
泰二は市三を見、宗吉を見た。のろが立ちあがり、他の三人が立ちあがった。
「立てよ」と忠太が泰二に云った、「外へ出るんだ」
泰二が立ちあがり、市三からさきに、六人は外へ出た。宗吉が女中に、すぐに帰るから座敷はそのままで、と云い残し、かれらは泰二を中に挾んで表通りから横丁へはいり、狭いろじをぬけて空地へ出た。三百坪ばかりの草原で、まわりはぎっしりと家が詰っているが、二つ三つかすかに灯が見えるばかりで、あとはただ黒い影絵のような眺めだった。そこはまえに源蔵ヶ原と呼ばれていて、三倍くらいも広かったが、いまはその名を知っている