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とろ

瀞

佐藤 垢石

「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页

青空文庫

私は旅先を急ぐ釣友と別れ、旅館の都合で十津川と北山川と合流して熊野川となる川相から一里下流の、日足へ足をとどめたのである。ここらあたりの風景もひろびろとして快い。

日足の宿の二階から、熊野川の広い河原が眼の下にある。私は、ここで四、五日の間、心ゆくばかり鮎の友釣りを楽しんだ。六月はじめの解禁早々ではあるけれど、大きな姿の鮎がまことに数多く釣れたのである。

その年の八月下旬、再びこの熊野川の日足を訪れた。

二

実は、伜の暑中休暇を利用して、彼に熊野川の大きな鮎を釣らせたいと思ったからである。八月二日の朝、東京を出発した。

同行者は日本評論社の社長鈴木利貞氏と私と伜の三人である。まず、東海道の金谷駅で支線に乗り替え、家山町を志した。大井川の中流で友釣りを試みるつもりであったのだ。

ところが、大井川の上流地方、つまり赤石山脈の南面に連日大雷雨が続いたため山崩れが起こり、川は灰白色に濁って釣りの条件がよろしくない。それでも、せっかくここまで訪ねてきたのであるからというので、三人は流れへ竿をかつぎだした。しかし、予想したとおり釣れぬ。三人合わせて僅かに十二、三尾を釣ったのみで、二時間ばかり遊んだ末、宿へ引きあげた。