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とろ
瀞
佐藤 垢石
「続たぬき汁」星書房、1946(昭和21)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,908 字 · 30 页
鈴木氏が旅の慰めに、上等のウイスキーを一本携えて行った。夕食のとき、二人で差し向かいにその栓を抜くと、そのとき宿の若い亭主が訪ねてきて四方山ばなしをはじめ、あまりお世辞のよい男なのに、一杯さすと彼はこのウイスキーの質を賞めながら盛んにのむ。
私らは、亭主の口前に釣り込まれて、また一杯また一杯とさしてやると、気がついたときには、四合瓶の大部分を彼にのまれてしまっているのである。彼は私らの室を上機嫌になって辞し去るとき、後刻上等の日本酒を届けると約束したが、待てども待てども彼は約束を実行しなかった。
翌朝、金谷駅へ引き返し、そこで鈴木氏は別れて東京へ帰った。私と伜の二人は、京都へ向かった。賀茂川の上流の、放流鮎を釣ってみたいと思ったからである。上賀茂にある姪夫妻の家へ足をとどめ、そこから一里半ばかり上流の賀茂川の峡を探ったが、その年は放流鮎僅かに二万尾、既に釣り尽くしたあとで、土地の若い者が一人。小さい瀬の落ち込みで、引っ掛けの立て引きをやっているのを見たばかりである。
その男が、こうしてやっていれば、釣り残りが一尾や二尾掛かってくるかも知れないと思って、今朝から三時間辛抱していたけれど、今もって一尾も当たりを見ない。