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かせいたんけん
火星探険
海野 十三
「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页
あれが気持よくないんだろう」
「うん、そういわれると、そうかもしれない。たしかに火星を見ていると気が変になりそうで仕方がない。あの大きな物体が、なぜ落ちもしないで宙に浮かんでいるんだろう。ああいやだ。僕はとうとう火星に負けちまったようだ」
山木はそういって、両手で自分の眼を覆った。河合は同情して、友を極力はげました。
「もうすこし経てば、気持のわるいのが直るよ。今が一等いけないんだ。つまり今は、火星が大きな球として見えているから、どうして下へ落ちないのかと気持が悪くなったり、お月様の化け物のように感じたりして、どうもよくないんだ。もうすこしたてば、いよいよ火星は大きく広がって、飛行機に乗って空から地球を見下ろしたときと同じようなことになる。そうなれば、何でもなくなるのさ」
河合は、うまい説明で山木を慰めた。だが河合も、決していい気持でこの凄絶な天空の光景を眺めているわけではなかった。彼もまたその異景に圧倒されまいと一生けんめいに自分の精神を鼓舞しているわけだった。
午後八時、宇宙艇はついに問題の宇宙塵圏内にとびこんだ。
操縦室には、艇長デニー老博士を始め数人の技術者たちがつめかけ、全身を神経にして、どんなことが起るかと待ちかまえていた。