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かせいたんけん

火星探険

海野 十三

「サイエンス」1945(昭和20)年12月~1946(昭和21)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 77,522 字 · 155 页

青空文庫

近づく危険圏

よく熟れた杏のような色をして、小山のような火星が、暗黒の宙に浮いているその姿は、凄絶きわまりなき光景だった。ネッド少年は、いよいよ気が滅入ってきて、口をきくことがだんだん少なくなった。

近頃ではネッドばかりではなく、山木健までが元気を失い、おびえたような顔をしているのだった。そして展望室へちょいちょいでてくるが、ほんの僅かの時間しかそこにはいないで、でていってしまう。

河合が心配して山木に話しかけた。

「山木君。なぜそんなに元気がなくなったんだろうね、君は……」

「うん、どうも身体の具合がよくないんだよ。熱もないんだが、ひょっとしたら、あのせいじゃないかな」

と山木は顎をしゃくって、窓外を示した。そこには火星が大きく視界を遮っていた。

「ああそうか、君もやっぱり宇宙性神経衰弱にかかっているんだな」

「えっ、宇宙性神経衰弱だって」

「そうなんだ。この病気は、大宇宙のあまりに神秘な、そしてすさまじい光景にぶつかって、僕たちの心がひどく圧迫せられる結果起る病気なんだ。君もそうなんだろう。あのとおり火星は化け物のように大きく天空にかかって僕たちの前に立ちふさがっている。