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ひなわじゅう
火縄銃
江戸川 乱歩
「江戸川乱歩全集 第十一巻」平凡社、1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,117 字 · 19 页
警察医と刑事は這入って来るなり、真直に寝台の方に歩み寄って、何かもぞもぞ調べていたが、見ていると、刑事が死体の胸のあたりから鎖の附いた懐中時計を引きずり出した。そして誰にともなく、
「やられたのは一時半だな」
と呟やいた。銃弾に当った時計の針が一時半で止まっていたらしい。刑事がそうして死体を調べている間に、警部はボーイを招いて訊問を初めていた。
「被害者は昼食を食堂で済ましてから部屋に帰ったというのだな。ウン、それでお前は何か鉄砲の音のようなものを聞かなかったか」
「そういえば、お昼過ぎ、何だか大きな音がした様にも思いますが、何分直ぐ裏の山で始終鉄砲の音がしているものですから、別に気にも止めませんでした」
「この机の上の銃は――火繩銃のようだが、これはどうしたのだ。被害者の物か」
そう言い乍ら、警部はその火繩銃を取り上げ銃口を鼻に近づけたが、思わず呟いた。
「フン、まだ煙硝の匂が残っている」
「アア、それでございますか、それはこの方の弟様ので――」
ホテルの主人が横から口をはさんだ。
「弟?」
「ハイ、二郎様と仰有いまして、矢張り手前共にお泊りで、只今お留守でございますが、母屋の方にお部屋がございます」