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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

窓からは、セメントが、ばらばらと下へおちる。誰か、通風窓の鉄格子を、ひき切っている者があるのだった。

二十分ばかりたつと、その通風窓から、ぬっと、一つの顔が現れた。

「おい、ハルク」

あたりを忍ぶようなこえで、倉庫の中へよびかけたが、返事はなかった。

「どうしたのかな。もう一本切れば、なんとか入れるだろう」

ふたたび、きいきいと鉄格子をひき切る音がはじまった。どこから持ってきたか、高速度鋼のはまった鋸を、一生けんめいにつかっているのは、外ならぬ水夫の竹見だった。彼は、ハルクの身の上をあんじて、この無理な仕事をつづけているのだった。

やがて竹見は、ついに目的を達して、通風窓から、倉庫の中に、ずるずるどすんと、入った。

「おい、ハルク。どこにいる」

竹見は、マッチをすって、あたりを探しまわった。

「あ、こんなところに……」

とうとうハルクの倒れている隅っこを見つけた。

ハルクは、虫の息だった。体は、火のようにあつい。竹見は、おどろいて、空き瓶の中に入れて持ってきた水で、彼のくちびるをうるおしてやった。

ハルクは、やっと気がついたようであった。

「お、おのれ!」