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かやくせん

火薬船

海野 十三

「大日本青年」(「浪立つ極東航路」のタイトルで。)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,552 字 · 124 页

青空文庫

「なんじゃ、海底でセメントを使う?」

「そうです。そのセメントは太陽光線で風化するぞと、私はポーニンにいったんですが、そんなことは平気だ、というのです。これはつまり風化をおそれないのではなくて、そこには太陽光線がとどかないから、だからおそれないという意味なんです。太陽光線のとどかないところといえば、地底か海底か、そのいずれかです」

「なるほど、手のこんだ推理だ」

長官は、別の髭の方に、指先をうつした。

「それから私は、潮風や塩分によって、そのセメントはすぐくろくなるぞといったのです。ポーニンは、これをきいて、くろくなるということは、セメントが分解して変質でもするという意味かと、聞きかえしました。私は、そうではない。黒ずんで見た目がわるいだけのことで、品質にはかわりないといったところ、ポーニンは、それなら自分の使い途にはさしつかえないというので、近日はっきり注文すると約束をしてくれました」

「うん」

「つまり、これで判断すると、ポーニンがこれからそのセメントをつかおうとする所は、塩気があるのです。――さきに申上げた第一で、地底か海底かのどっちかときまり、次の第二で、塩分の多いという条件が入れば、結局その答は、ポーニンのやつ、海底でそのセメントをつかうのだということになるではありませんか」