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てん
点
小川 未明
「新天地」1909(明治42)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,063 字 · 17 页
中にはそうでない、翁は神様に祈る真似をするのだといって、翁のすることをすべて見逃していた。けれど翁に数学を習いに来た子供等は、翁がこの頃訳の分らぬことをいうのと時々腹を立てて、顔を真赤にして、手を振り足音を荒げて室内を歩き廻るので、怖しいといって来なくなったものも沢山ある。が、彼の赤目のちぢれ毛の跛を打ったように生徒を擲ったことを聞かぬ。或時には癇癪を起して持っている石筆をば、ストーブを目がけて投げ付けたことがある。其様時には白い石筆が微塵に砕けて散って、破片は窓の硝子を打ったり、ベンチの上に飛び散った。
翁が、日に増し気が変って来るにつれて、益々神とか、死とか、命とか、時とかいうような哲学上の問題を相手が分るにせよ、分らぬにせよ誰れ彼の区別なく顔を見る人に向って説き付けるようになった。――赤目のちぢれ毛の跛にさえ、偶々ストーブに薪を入れに来るのを呼びとめて、霊魂不滅を説き聞せたことがある。赤目のちぢれ毛は遂には翁をば怖しい人だと思って翁がただ独りで教壇に向って、瞑想している時などには、たとえストーブが冷かになるということを知っても薪を持ち運ばぬようになった。