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むざんやな

無惨やな

久生 十蘭

「オール讀物」1956(昭和31)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,601 字 · 16 页

青空文庫

と愛想よく挨拶をし、庭にむいた広書院に案内した。主水はうちつづく座敷をながめ、

「お手広なお住居ですな。風がよく入って涼しいこと」

などといっているところへ、作左衛門が吸物の小附けで、酒を持ちだしてきた。

「酒は三献というところでおさめ、用談のすみ次第、ゆるりとさしあげるつもり」

蔵人は盃台から盃をとって、一杯飲んで又内に差し、その盃から、さらに一献かさね、それを民部左衛門に差した。

盃が三巡したところで、家来を呼んで膳をひかせ、勝手へ出て来て、

「みなを長屋へおしこめろ。口々の錠を忘れるな。一間一間に燭台を出しておけ」

と作左衛門に言いおき、書院にとってかえすと、又内に、

「姫路にお下りになるのは、しばらく間のあることゆえ、憚りながら、家内をお見知りおきねがいたい。江戸と姫路のちがいはあるが、ご同役になったことだから、以後、ご別懇にねがいたいので」

「ご丁寧なご挨拶で痛みいる。では、ご内儀さまへ、ちょっと、おしるべに」

二人は座を立って書院を出る。いく間ともなく通りすぎ、奥まった八畳に又内を案内すると、蔵人は、

「少々、お待ちを。只今、家内を召し連れます」