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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

」

「よかろう。」と武原は答えた。

フグの茶漬けとか割烹旅館とかいう、志村の不穏当な「内緒話」は、男たちの間では、物好きな奴だとの苦笑を催させるぐらいなもので、大した反響は起さなかったが、女たちの間ではそうでなかった。

食物の話とスキャンダルとは、この種の有閑社交界では最大のトピックとなる。志村のことはひそひそと噂に上った。破廉恥な人だと言う者もあった。道化けた人だと言う者もあった。女性を侮辱する人だと言う者もあった。そしてさまざまに批評しながら、実は誰か、その旅館とやらに彼と二人で行った者があるのではなかろうかと、穿鑿の横目を使ってるのだった。

そういうことを、志村自身、よく知っていた。表面は敬遠されてるようで、実は少しも排斥されていないことを、知っていた。誰かが火遊びをしたのではあるまいかと考える、その底には、本人にも火遊びの要素があるのだ。ひそかな下心というか、隙間というか、そんなものがあるのだ。

だから、志村は、にこやかな様子で、内心は傲然と反り返って、彼女等の間に立ち交っていた。――須賀邸の、老夫人の誕生日をかねた、ティー・パーティーの日である。