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むほうもの

無法者

豊島 与志雄

「中央公論 文芸特集」1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,837 字 · 24 页

青空文庫

ティー・パーティーといっても、男たちにとっては、むしろカクテル・パーティーなのである。材料一式持ち込んできた或るバー・テンダーが、カクテルの腕を振っていた。懇意な人たちだけの集まりなので、遠慮なく飲むことが出来た。応接室の方では、中央の大卓を片寄せて、レコードでダンスをやってる若い人たちもいた。日本室の広間には、日本酒も出ていた。

薄雲もなく晴れ上った日で、縁側の硝子戸には明るい斜陽が射していた。だが、庭の芝生は霜枯れ、その向うの植込みには、常緑樹の葉が黒々と静まり返っていた。

長い縁側をちょっと折れ曲った広縁の片隅の、毛氈を敷いて小卓に籐椅子が据えてあるところで、志村は、今井房代夫人につかまってしまった。

彼女は太田夫人となにか話していたが、志村が通りかかると、手先で招き寄せ、太田夫人は立ってゆき、そのあとに志村は腰を下さざるを得なかった。

志村には、房代夫人は苦手なのである。彼女は須賀邸に集まってる婦人たちのうちでは恐らく一流の名門の出であり、主人は或る通信社の重役であって、彼女自身は世話好きだし、なかなか勢力があった。志村は嘗て彼女にたいへん世話になったことがある。