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つばくろ(つばくろ)
燕(つばくろ)
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,395 字 · 52 页
梶本はそこで口をつぐんだ。庄野は持っている茶碗をみつめ、渡貫は庭のほうを見、又左衛門は天床を見あげていた。
広縁の外では、二人の老人が、大きな方形の卓を運んで来、陶製の腰掛を四つ、その卓の四方に据えていた。卓はがっしりとした胡桃材で、なんの飾りもないが、時代がついているのとよく拭きこんであるためだろう、その単純な形がそのままで、云いようもなく美しく荘重にみえた。
「そうだ」と庄野が低い声で云った、「――おれたちには輝かしい未来があった」
「渡貫はどうだ」
「念には及ばないさ」と渡貫は答え、「焚火をしたのは庭のあのあたりだ」とそちらを指さして云った、「みんなの昂奮した顔、激しい昂奮のために、眼が血ばしっているような顔が見えるようだ」
そこでまたかれらは黙った。
松林のかなた、おそらく湖畔であろう、青年たちの歌ごえが聞え、どっと囃したり笑ったりするのが、とぎれとぎれに聞えて来た。だが、こちらの老人らの耳にははいらないのであろう、かれらは追憶の甘さと苦さを、それぞれの想いの中で、それぞれに噛み味わっているようであった。
「さて、――いまはどうだ」