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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
そういう御面会の方なら、おい房枝、お前お目にかかって、よくお礼を申せ」
「ええ」
房枝は、はじめから、あの奥様ではないかと思っていたのだ。スミ枝の話で、それはまちがいなく、その方だとわかった。房枝は、はじめすぐにも、とんでいって、お目にかかりたいと思った。三十分前までの自分だったら、すぐとんでいったろう。しかし今の房枝は、なんだか気がすすまなかった。
(自分は、暗い運命の女だ。今もこうして、バラオバラコという怪人物から、脅迫をうけている身だ。今夜から、自分は、またどんな暗い道をたどらなければならないか知れないのだ。そういう呪われた身の上の女が、あのような上品な奥様におつきあいすることは、奥様をけがし、そして奥様に、まんいち危難をかけるようなことがあってはたいへんである。これは、おことわりするのがいいのではないか。すくなくとも、今夜呼び出しの事件が、すっかり片づいてしまうまでは)
房枝は、そんな風に思って、スミ枝、団長黒川が早く面会させようとすすめるのにかかわらず、へんじをにごしたのであった。
「あたし、お目にかからないわ。熱があって寝ています。舞台へは、やっとむりをして出ていますと、奥様にいってくれない」