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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

という意味のことをいった。房枝は、よろこんでそれをもらった。

「房枝さん、じつは、まだ、いろいろお話をいたしたいこともございますけれど、御病気にさわるといけませんから、今日はこれでしつれいさせていただきますわ。そのかわり、また伺ってもようございますわね」

と、道子夫人は、房枝に約束をもとめるようにいった。

房枝は、そのへんじをするのがたいへんくるしかった。

「いいえ、こんな場所は、奥様などのたびたびおいでになるところではございません。また、どんなまちがいがあるかもしれませんし、もうどうか、けっしておはこびになりませんように」

房枝は、血を吐く思いでそれをいった。今夜の呼出し事件がなかったら、この日房枝は、道子夫人の膝にとりすがって、思うぞんぶん泣いてみたくてしかたがなかった。それはなぜだか、理由のところは房枝にもよくわからなかったが。しかし、もうそんなねがいは夢となった。あくまで冷酷にせまってくる現実とたたかわねばならないのだ。夫人を慕えばこそ、今は夫人にふたたびいらっしゃらないようにと、いわなければならなかった。そう強くいって、房枝はかろうじて、わっと泣きたいのをこらえていた。