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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
なにしろ、黒川の怪我の程度が、はっきりしないので、房枝は心配であった。今、黒川にどうかなってしまわれると、せっかく息をふきかえした、新興ミマツ曲馬団の全員が、また路頭に迷わなければならない。だから、房枝は、黒川をまもり、そして彼に、一刻も早く医師の手当をうけさせたいと思ったのである。
そのために、彼女は、心ならずも、帆村のそばを車で通りすぎてしまったのだ。もっとも彼女は、運転台のターネフに向かい、車をとめてくれるようにとこえをかけたが、ターネフはそれがわからないらしく、車は、ずんずんとスピードをあげていったのだった。
それに、そばにいるニーナが、
「お嬢さま。しんぱいいりません。よいドクトルをしっていますから、その人にみせましょう。わたくしが、手落なくしますから、しんぱいいりません」
と、しきりに房枝をなぐさめたのであった。
「ええ、どうか、一刻も早く、医師にみせていただきたいのです。これは、あたくしたちの大事な主人ですから」
「わかります。よくわかります」
美しいニーナは、うなずいた。
自動車は、附近の病院の門をたたくかと思っていたのに、そのままずんずん山の手の方へ走って、やがて今もいったように、大きな洋館の、玄関についてしまったのである。