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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页
「おお、房枝さん」
いきなり、横町からとびだしてきた者があった。
「あら」
房枝は、おどろきの声を発したが、そのままスミ枝の手をとって、急ぎ走りぬけようとした。
「房枝さん、お待ちなさい」
よびとめたのは、ほかでもない、帆村荘六だったのである。
房枝は、どなりつけたいような、むかむかする胸をおさえて足早に歩いた。
「おお、房枝さん」
こんどは、別な声が房枝をよびとめた。なまりはあるが、カナリヤのようにきれいに澄んだ声だった。それはニーナだった。そばには、ワイコフ医師もいた。
「あら、ニーナさん」
「あたくし、待っていました。黒川さん、あなたに会いたがっています。すぐ来てください」
「あら、そうですか。どうしたのでしょう、容態でもわるくなったんじゃありません?」
「ええ、そうです、そうです。黒川さん、至急、あなたに会いたがっています。それからね、房枝さん。あたくし、あなたのために、しんせつなことを考えました」
「親切なことって」
「あなたを、あたしのところで、よい給料で働いてもらおうと思います。仕事は、むずかしくありません」
「そうですか。でも、あたし、この方と一しょに働こうって、約束したばかりなんですのよ」