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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

帆村の命は、乱暴者のトラ十の前に、今や風前の灯同様である。彼の命と、貴重なX塗料とが同時に失われそうになってきた。

「兄い、そんなこわい顔をしなくてもいいじゃないか。おれは、この箱をお前に見せないとはいいはしないじゃないか。ほら、このまま兄いにまかせるよ」

がたん! と、音がして、四角い箱は、トラ十の前へ投げ出された。

帆村は気が変になったのか、あんなに大事にしていた箱を、とうとうトラ十に渡してしまったのである。

トラ十のきげんが、にわかに直った。

「なんだ、世話をやかせやがって、はじめから、おとなしくこうすればいいのだ」

トラ十は、それでもまだ油断なく、ピストルの銃口を、帆村の胸にむけたままである。そして左手で箱をあけにかかった。さあ、一大事である。

「おい、この中に入っているのは、一たい何だ。正直に申し上げろ」

トラ十の追及は、一向ゆるまない。帆村はいよいよ困って、ことばもない。帆村の困っているのをトラ十は横目で見て、ふふと鼻で笑った。

「ふふふ。どうやら説明も何もできないほど貴重な品物と見える。そうときまれば、ぜひとも中身を拝見せずにゃいられない。