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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

トラ十、顎をおさえた。

つづいて帆村は、ピストルをたたき落した。しかしトラ十は無類の豪の者である。一、二度は、どうと艫にたたきつけられたようになったが、すぐさま、やっと、かけ声もろとも、はね起きた。

「小僧め、ひねりつぶすぞ」

「なにをッ」

せまい船内で、はげしい無茶苦茶な格闘がはじまった。勝敗は、いずれともはてしがつかない。船は、今にも、ひっくりかえりそうである。帆村は、そのたびに、船の重心を直さなければならなかった。

「これでもかッ!」

「ぎゃッ」

帆村の、猛烈な一撃が、ついに勝敗をけっした。トラ十はよろよろと、後によろめくと、足を舷に払われ、あっという間に大きな水煙とともに、海中に墜落した。

帆村は、すぐさま艫へとんでいって、舵をとった。そして水面に気をくばった。

ところが、ふしぎなことに、懐中に落ちたトラ十は、いつまでたっても浮いてこなかった。二分たっても、三分たっても、とうとう十分間ばかり、水面を見ていたが、ついにトラ十は浮かんでこなかった。

「はて、落ちるとき、どうかしたのかな」と、帆村は、首をひねった。

(が、そんなことはどうでもいい。あのわずかな隙を狙って、うまくトラ十をたたきのめしたのだ。