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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

そして、自分の命をとりとめ、それから、貴重なX塗料を)

帆村はそこで、目を船内に転じて、きょろきょろとあたりを見まわした。

船内には、X塗料を巻いてあった布や紙が、ちらばっていた。帆村は、その間を探しまわった。

「おや、どこへいったろう。X塗料の棒が見あたらないぞ」

と叫んだが、ふと彼は、海中へ視線を走らせると、はっと気がついて、一瞬時に、顔面が蒼白となった。

「し、しまった。トラ十め、あれを手にもったまま、海中へ落ちた!」

さあ、いよいよ一大事だ!

無念の報告

「そいつは、遺憾至極だなあ」

黄島長官は、ほんとうに、遺憾にたえないといった語調で、とんと、卓子のうえを拳でたたいた。

ここは、検察庁の一室であった。

長官の前に、重くしずんだ面持で立っているのは、別人にあらず、帆村荘六その人であった。

帆村は、ついに一命をまっとうして、今日、東京についたばかりであった。彼は、とるものもとりあえず、重大な報告をするため、黄島長官のもとにかけつけたのだった。

「まことに、遺憾です。私は、長官に、面をあわせる資格がありません」

「うむ、君の骨折は感謝するが、せっかく、手に入れながら、失うとはのう」