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ばくやくのはなかご

爆薬の花籠

海野 十三

「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 101,908 字 · 204 页

青空文庫

こんなときに帆村がいれば、どんなに助かるかもしれないのだけれどと、くやしくなった。

けっきょく、仲間の人たちの証言も、係官を納得させるほど十分ではなかったが、船員の中に、房枝が乗船当時調べたことをおぼえている者があって、その証言で、やっと上陸を許可された。ただし条件つきであった。

「常に、居所を明らかにしておくこと。毎月一回、警察へ出頭すること。よろしいか」

房枝は、今日ほど自分が捨子であることを、もの悲しく思ったことはない。原籍がわからないために、こんな疑いをうけるのである。

(ああ、お母さま、お父さま。房枝は、今、こんなに悲しんでいます。ああ)

彼女は、胸に手をおいて、心の中ではげしく、まだ見ぬ父母に訴えた。

この房枝のかなしみを、いつの日、誰が解いてくれることやら。

やっと解放された房枝たちミマツ曲馬団員は、一まず横浜のきたない旅館に落ちついた。これから、一同の身のふり方を、いかにつけるのかの、相談が始まった。けっきょく、他に食べる目当もない一同だったから、人数は半分以下にへったが、ともかくも、空地にむしろを吊ってでも、興行をつづけることにきめた。