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はちゅうかんじけん

爬虫館事件

海野 十三

「新青年」1932(昭和7)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,914 字 · 38 页

青空文庫

3

扉を押して入ると、ムッと噎せかえるような生臭い暖気が、真正面から帆村の鼻を押えた。

小劇場の舞台ほどもある広い檻の中には、頑丈な金網を距てて、とぐろを捲いた二頭のニシキヘビが離れ離れの隅を陣取ってぬくぬくと睡っていた。その褐色に黒い斑紋のある胴中は、太いところで深い山中の松の木ほどもあり、こまかい鱗は、粘液で気味のわるい光沢を放っていた。頭は存外に小柄で、眼を探すのに骨が折れたが、やっとのことで彫りこんだような黄色い半開きの眼玉を見つけたときには、余りいい気持はしなかった。帆村たちの入って来たのが判ったものか、フフッ、フフッと、風に吹きつけられたように身体の一部を波うたせていたのだった。

こんなのが、裏手にはまだ六七頭もいるんだと思うと、生来蛇嫌いな帆村はもうすっかり憂鬱になってしまった。

そのとき奥の潜り戸をあけて、副園長の西郷が、やや小柄の、蟒に一呑みにやられてしまいそうな、青白い若紳士を引張ってきた。

「ご紹介します。こちらがこの爬虫館の鴨田研究員です」

二人は言葉もなく頭を下げた。

「園長の最後に此の室へ来られたときのことをお伺いしたいのですが」