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うし

牛

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第五号」1953(昭和28)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,971 字 · 25 页

青空文庫

もっとも、説明の仕方はうまくはなかった。

娘に暴行を加えたのは五人の学生で、自分はそれを認めて駈け寄ったものだと説明した。その証拠に、五人の学生は逃げ散っている。それは彼らが自分の姿を認めたからで、さもなければ、彼らが逃げ去ることは起り得ないと解釈をつけ加えた。

ところが娘が突然叫んだ。

「ウソだア! みんなが逃げたのは与作が来てくれたからだ。そして、お前だけが逃げそこなったのだ」

「それみろ」

娘の母親は彼の胸ぐらをつかんだ。

「往生際の悪い奴だ。さア、白状しろ。誰と誰がいたか」

そこで光也はつまってしまった。一たびつまってしまうと、もう落付きを取りもどすことはなかなかできなくなる。

あとの四人は分らないが、見張りの鶴には顔に見覚えがあった。隣村の高校生だ。

けれども、それを云うと巡査の行為をしたことになってしまうという不安が彼を捉えてしまった。彼の全身からまた冷汗があふれだしていた。

「逃げた五人を探して下さい。そうすれば、みんな分ります」

彼は一生懸命にそれをくりかえした。

「よーし。片ッぱしからフン縛って、キサマも当分懲役だ」

呪いの言葉をのこして、母と娘は立ち去った。