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うし

牛

坂口 安吾

「文藝春秋 第三一巻第五号」1953(昭和28)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,971 字 · 25 页

青空文庫

思わず目マイがしてスッと血の気がひくのである。

緒方の講義にでることができなくなったばかりでなく、校庭でランニングの練習もできなくなった。緒方とカチ合う不安があるからであった。

しかし、郊外にある市営競技場まで練習にでかけた。スポーツの練習を怠ると、その一日不眠や食慾減退や疲労や精神不統一に悩むからであった。そのかわり、柔道の練習を中止した。ランニングと柔道を一しょにやることができなくなったのである。

彼は一週間ほど練習を休んだのち、責任を感じて、正式に退部を申しでた。次の学期から彼は副将に予定されていたからであった。

部長は彼をよんだ。

「なぜ退部するのか」

光也は本心をあかすことができなかった。

「一身上の都合です」

「どんな都合か」

「柔道はもうやれません」

「なぜやれないのか」

「思想の悩みもあります」

「悩みを語ってきかせよ」

「柔道はやるべきではないです」

「なぜ柔道をやってはいかんのだ。つまり、戦争反対かな」

「一身上のことです。身体に悪いです」

「病気なのか」

「イエ。しかし、病気になってはイカンと思っています」

「当り前だ。誰だってそう思っているから、運動をやって身体を鍛えるのだ。