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うしをつないだつばきのき
牛をつないだ椿の木
「少國民文化」1943(昭和18)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,096 字 · 19 页
二人が椿のところへもどって来ると、そこに自転車をとめて、一人の男の人が立っていました。その頃は自転車が日本にはいって来たばかりのじぶんで、自転車を持っている人は、田舎では旦那衆にきまっていました。
「誰だろう。」
と、利助さんが、おどおどしていいました。
「区長さんかも知れん。」
と、海蔵さんがいいました。そばに来てみると、それはこの附近の土地を持っている、町の年とった地主であることがわかりました。そして、も一つわかったことは、地主がかんかんに怒っていることでした。
「やいやい、この牛は誰の牛だ。」
と、地主は二人をみると、どなりつけました。その牛は利助さんの牛でありました。
「わしの牛だがのイ。」
「てめえの牛? これを見よ。椿の葉をみんな喰ってすっかり坊主にしてしまったに。」
二人が、牛をつないだ椿の木を見ると、それは自転車をもった地主がいったとおりでありました。若い椿の、柔らかい葉はすっかりむしりとられて、みすぼらしい杖のようなものが立っていただけでした。
利助さんは、とんだことになったと思って、顔をまっかにしながら、あわてて木から綱をときました。そして申しわけに、牛の首ったまを、手綱でぴしりと打ちました。