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ぎゅうにゅうとうま

牛乳と馬

豊島 与志雄

「思索」1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,248 字 · 25 页

青空文庫

少し遠くにある町の方への用事は、町外れにある矢野さんの別荘の番人が、五日めごとにやって来て、すっかり済ましてくれるのである。

わたしの不平はそれぐらいだったが、お姉さまの気持ちが少し変ってきた。

小野田さんのことを、はじめ、お姉さまはただ聞き流されただけだったが、いつのまにか、たいへん気にかけなさるようになった。

なんでもない時に、お姉さまはふとお洩らしなさったことがある。

「あのひとは、きっと、わたくしに大事な御用がおありなさるに違いない。」

びっくりして聞き返そうとすると、お姉さまは、きゅっと唇をゆがめていらっしゃる。わたしは何にも言えなかった。

小野田さんが午前中に来ないと、お姉さまはなにかじれて、わざと大きな声でお言いなさったこともある。

「小野田さんは、今日はどうなすったのかしら。」

時々、小野田さんが来る頃の時間を見計らって、お姉さまは庭に出て、籐椅子にじっと腰掛けていらっしゃる。庭の芝生の外は低い生垣になっていて、外庭と仕切ってあり、その生垣越しに、門から勝手口へ行く小道の方が見える。或る時、お姉さまと小野田さんとが、生垣越しに会釈を交わされてるのを、わたしは見た。