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ぶつりてきくうかんのせいりつまで

物理的空間の成立まで

戸坂 潤

(カントの空間論)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,996 字 · 61 页

青空文庫

それでは直観空間に相当する規範性とは何であるか。私はすでに直観空間と幾何学の対象との区別を指摘したのであるが、幾何学の判断乃至命題の apodiktische Geltung は幾何学が直観空間から由来する処に成立すると云わねばならぬ。即ち直観空間の実在認識の規範に由来するのでなければならぬ。直観空間は経験に規範として先立つという意味に於てアプリオリでありそれに従って幾何学は経験から独立に妥当するという意味に於てアプリオリなのである。勿論幾何学の先験的妥当性そのものが直にこの規範性であるのではない。それが規範性の意味を持ち得るのはただそれが実在の認識に応用される時に限るであろう。併し少くとも直観空間の規範に相当するあるものが幾何学であることだけは明らかである。それ故今もし直観空間の規範に相当する規範性を求めるならばそれは正に幾何学が応用される処に成り立つ筈である。直観空間と幾何学的空間との区別を明らかにした以上かくして求められた規範性が直観空間の規範そのものではないのは云うまでもない。幾何学が感覚乃至知覚に応用される時始めてこれに独立な規範性があり得るのである。