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おぎふくうた
犀星王朝小品集
室生 犀星
室生犀星『犀星王朝小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:荻吹く歌、舌を噛み切った女、玉章、津の国人、野に臥す者、花桐、姫たちばな。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 页
経之自身も、つま戸の軋りは頭の中に覚えがあった。
「二度目は閉まる音もいたしました。あの戸は永い間きしっていてよく音をきき分けることが出来ます。」
「して御達らのようすにかわったこともござりませんでしたか。」
「どの女であるか分らぬが、そちのこころ当りはどう。」
「一向に見当がつきませぬが、よく心得て置きます。」
「よほど大胆な女であろうの。」
「夜の庭をよこぎることはいままでの御達らも、怖がっているくらいゆえ、よほどの決心でもなければ庭わたりは女の身では出来ませぬ。」
経之はたちばな、はぎ野、まゆみ、たえ、すおう、とかぞえた御達のなかで、すぐ頭を射てくるものははぎ野だった。長身の黒髪は海藻に似たかがやきを見せていたし、すべすべした手足は経之自身にもふかくめでられた、その感じの生きいきとしたものを、彼自身のなかに思いあてることができた。そのような庭わたりのできるような素早さをつつんでいる者は、はぎ野のほかには見当らなかった。何よりもそのあでやかな色気は、どうかすると、すぐにも燃えあがるよい血色をたぎらせているのだ。経之ははぎ野のうつくしさが困ったうつくしさであることを知ると、もうかれの頭では、はぎ野のほかの女でないことが分った。