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おぎふくうた

犀星王朝小品集

室生 犀星

室生犀星『犀星王朝小品集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:荻吹く歌、舌を噛み切った女、玉章、津の国人、野に臥す者、花桐、姫たちばな。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 105,794 字 · 211 页

青空文庫

そしてこの時代の礼儀の言葉としての筒井の言い方にも、このあたりに稀に見る女の気高さがこめられてあった。

「御めでたい鶴にございます。」

「ありがとう、そなたという鶴もいてくれて双鶴じゃ。」

主人はそういい息子をちらりと見た。青年はべつに気色ばむことはなかったが、機嫌のよい頬の色をしていた。そして彼は少しあらたまっていった。

「母上がいられぬものだから父上も不自由していられます。」

「お亡くなりあそばされたのでしょうか。」

「もう二年にもなります。」

青年はそれだけであとはいわなかった。

「存じませぬことながら失礼申し上げました。」

筒井は手をついて悼みの言葉をのべた。父という人は満足げにその言葉を受けて、軽く頭をさげた。

「母のない家というものは灯火を失っている居間のようなものだ。そなたがいてくれてめでたい元旦をことほぐことができた。」

「わたくしこそこのようなおうたげに列なりをいただき、お礼の申しようとてもございませぬ。」

「ゆるりとされるよう。」

「ありがとうございます。御衣裳もいただきましてございます。」

愉しい夜は雪にもならず、みな歌をものして過ごし、更けて筒井は下がろうとして仲の遣戸をあけようとすると、よい月夜になっていた。