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カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情
久生 十蘭
「オール讀物」1939(昭和14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页
ふん、こいつァいいや」
そう言って、みなが食事をしているほうへ向って、
「おい、ピポ! この悪たれ野郎がおまえに喋言してえそうだ。掻喰いがすんだら、こっちへやってきねえ」
と、怒鳴った。
「おい、兄ちゃん、何かひと口しめしなよ。鸚鵡でもやろうか」
鸚鵡、……どうせ、何か飲物の隠語だろうが、学校の悪たれどももさすがにこうは言わない。向うみずに引受けると、どんなものが飛び出してくるかわからない。やんわりと辞退した。
「まあ止めておこう」
「じゃア、石油はどうだ」
「ガソリンや石油はなるたけ飲まないようにしているんだ」
「何を言ってやがる、このボケ茄子め、おいらのところの火酒にガソリンなんざ入ってやしねえやい。ふざけたことを言いやがるとぶッ叩くぞ」
これはどうも、そろそろいけなくなってきた、と、薄ら寒くなっているところへ、犂の柄のようにヒョロリと瘠せた、影のような男が、ぼんやりとそばへ寄って来た。
頬がすッこけて、色の褪めた壁紙のような沈んだ顔色をした、二七、八の青年である。ひどい顔面神経痛で、時々、ギクシャクと頬を痙攣らせる。狂信者によく見る、おれだけが世界の真理を把んでいると確信しているような、ひどく落着き払った奇妙なようすをしている。