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カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情
久生 十蘭
「オール讀物」1939(昭和14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页
ところで、その眼たるや、ちょっと形容しかねるような物凄いようすをしている。ひと口に言えば、烏眼が画鋲の頭ほどの大きさしかなくて、白眼がひどく幅をきかせている。西洋ふうに言えば「凶眼」日本ふうに言えば、れいの四白眼。その代表的なやつなんだからタジタジとなった。これゃア、えらいやつが現れて来たと思って、すくなからず萎縮していると、犂の先生は、いやに指の長い、仏手柑のような、黄ばんだ瘠せた手を差しのべながら、海洞へ潮が差し込んで来るような妙に響のない声で、
「わたくしがゴイゴロフですが、あなたは?」
と、言いながら、いま言った、あまりゾッとしない眼でまともとこちらの顔を眺めた。
それにしても、これがゴイゴロフなら、石亭先生の描写した人間とはだいぶ懸隔があるようだ。先生の言われたところでは、おい、禿頭、ちょいと甘い話があるからひと口のせてやろうか、といったような横着な口吻でものを言う男だったが、見るところ、このゴイゴロフは、一種の沈鬱的人物であって、どこを叩いても、そんな陽気な調子が出てきそうもない。のみならず、こういう区域の人民とは思われないほどテニヲハがはっきりしていて、悪丁寧なほど慇懃懇切を極める。