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カラスキーしのゆうじょう
犂氏の友情
久生 十蘭
「オール讀物」1939(昭和14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,312 字 · 27 页
……それはモノによるねえ。洒落や冗談で極東からはるばる流れて来たわけじゃないんだ。それを承知で持ちかけるんだろうな。……と言っておいて、ゾクッと慄えあがりました。眼が眩んで、もう少しで酒呑台のほうへよろけて行くところでした。……いや、はや、実にどうも、慨歎に堪えんことです。するとゴイゴロフは、ひどく頼母しそうな顔をして、おお、そうか。見そこなってすまなかったなァ。おまえさんがそんな偉ら方とは知りませんでしたよ。……言葉つきまで急に丁寧になって、……もっともらしい顔をしてしちめんど臭い本なぞを読んでるが、どっちみちそんななァぼくよけだろうと睨んでいたんでさァ。ところで、あんたがそういうひとであれば、これゃア、いよいよもってかたじけねえんです。その辺のがらくたを引っ張って行くのとわけはちがうんだから、いっそ弾みがつきまさァ。……と、といったぐあいに、調子よくトントンと話が進んで、とうとう、さっき言ったような破目になってしまったんです」
この小心な石亭先生が、どんなようすで盗っとと渡り合ったか、どんな経緯で抜き差しならないことになったか、その辺のようすが眼に見えるようだ。