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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页
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「なあ、石井君、猫一匹ぐらい何だんね、そない云われたら可哀そうやおまへんか。」
と、そう云うのだったが、
「あの女の云うこと、真に受けたらアキまへんで。」
と、いつも庄造はそう答えるに極まっていた。あの女は兎角懸引が強くって、底に底があるのだから、何を云うやら眉唾物である。第一剛情で、負けず嫌いの癖に、別れた男に未練があるの、リリーが可愛くなったのと、しおらしいことを云うのが怪しい。彼奴が何でリリーを可愛がるものか。きっと自分が連れて行って、思うさまいじめて、腹癒せをする気なのだろう。そうでなかったら、庄造の好きな物を一つでも取り上げて、意地悪をしようと云うのだろう。―――いや、そんな子供じみた復讐心より、もっともっと深い企みがあるのかも知れぬが、頭の単純な庄造には相手の腹が見透せないだけに、変に薄気味が悪くもあれば、反感も募るのだった。それでなくてもあの女は、随分勝手な条件を沢山持ち出しているではないか。しかしもともと此方に無理があるのだし、一日も早く出て貰いたいと思ったればこそ、大概なことは聞いてやったのに、その上リリーまで連れて行かれてたまるものか。