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ねことしょうぞうとふたりのおんな

猫と庄造と二人のおんな

谷崎 潤一郎

「改造 新年号 第十八巻第一号」1936(昭和11)年1月1日<br>「改造 七月特大号 第十八巻第七号」1936(昭和11)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,020 字 · 131 页

青空文庫

」

と、夫婦で新開地の聚楽館へ出かけた。

おりんの経験だと、福子はいつも今津の家へ行って来た当座、つまり懐にお小遣のある五六日か一週間のあいだと云うものは、きまって機嫌がいいのである。このあいだに彼女は盛んに無駄使いをして、活動や歌劇見物などにも、二度ぐらいは庄造を誘って行く。従って夫婦仲も睦じく、至極円満に治まっているのだが、一週間目あたりからそろそろ懐が淋しくなって、一日家でごろごろしながら、間食いをしたり雑誌を読んだりするようになり出すと、ときどき亭主に口叱言を云う。尤も庄造も、女房の景気のいい時だけ忠実振りを発揮して、だんだん出るものが出なくなると、現金に態度を変え、浮かぬ顔をして生返事をする癖があるのだが、結局双方から飛ばっちりを食う母親が、一番割が悪いことになる。だからおりんは、福子が今津へ駈け付ける度に、やれやれこれで当分は安心だと思って、内々ほっとするのであった。

で、今度もちょうどそう云う平和な一週間が始まっていたが、神戸へ行ってから三四日たった或る日の夕方、亭主と二人晩飯のチャブ台に向っていた福子は、

「こないだの活動、ちょっとも面白いことあれへなんだなあ。