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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

そして次には、水遊びを思い出しました。爽快きわまりないウォータ・シュート遊びを。玉なす汗を流しながら、好ちゃんは、何と強靭に、優雅に、飛躍したでしょう。夏の音楽は酔うように響いて居りました。よろこびの旗はひらめいて。

段々雨がおさまって樹のしずくの音が聴えるようになったとき、一つの詩の断片が思い浮びました。われは一はりの弓、というのよ。われは一はりの弓。草かげにありて幾とき。猟人よ、雄々しい猟人よ、矢をつがへよ。われは ひとはりのあづさ弓、矢をつがへよ。斑紋美しき鷹の羽の箭をつがへば、よろこびにわが弦は鳴らん、猟人よ。

白い藤をくれた古田中さんの 孝子の俤 というのが出来上りました。お目にかけます。あなたは孝子夫人にお会いになる折がありませんでしたが、写真を御覧になったら、きっと西村の系統のふっくりさをお見出しになるでしょう。母の若かった頃お孝さんに似て居りました。白藤の感想おきかせ下さい。今よみかえしてみると、体のまだ弱いところが分る筆致なように思われますが。このお孝さんの思い出と、母の『葭の蔭』の中の幼時の思い出と、くみ合わして編輯すると、明治というものの香が高く面白いでしょう。