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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
西村の向島の「靴場」[自注10]が、母の方の西村のそばで、この靴場の炊事場で小さい女の子の母が、沢庵のしっぽをしゃぶって遊んだりしたのですって。高見さんの文章の銅像は、こわして先頃献奉になりました。では又ね。これからは今までより手紙かく時間が出来てうれしゅうございます。
[自注10]西村の向島の「靴場」――百合子の母の叔父にあたる人が靴工場を経営していた。
七月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
七月二十四日
十九日出のお手紙けさ頂きました。ありがとうね。このお手紙は、もう一二度ありがとうね、をくり返したいように、いろいろなたのしさ、面白さ、明るさの響がこもって居ります。手にもって振ると、そこから心のなぐさめられる音が珊々として来そうね。そして、大人にも、ときにはお握り(赤ちゃんが握って振って音であそぶおもちゃ)が、何とうれしいだろうと感じました。ましてやその響は天と地と星々に及ぶ詩の予告なのですものね。万葉の詩人たちは、素朴さと偽りなさにおいて匹敵いたしましょうが、叡智的観照については、時代のあらそわれない光彩が加って居ります。