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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
気持はわるくないお疲れでしたろうが、体の気持はおこたえになったことでしょう。かえって食事あがれましたか? 全く、美味いおつゆをたっぷりのませて上げとうございました。そして、お湯をあびせて上げてね。きのうの御苦労さまという感じの中には、たったきのう一日だけではない、その当時の様々が御苦労さまでした、にひきつづき今日から明日への御苦労さまがみんなこもった感じでした。云いつくせない御苦労さま、よ。しかもその御苦労さまが磐石のようにしずかで、もちこたえよくて柔軟であるとき、こころのおどろきはどんなでしょう。
字面にすべてがこもるものでないと痛感いたします。わたしが、見たりきいたりしたものはすべて生きていて、与えるものは筋ではないのね。人間を感銘せしめるのは筋ではないのですものね。ありがとう。
わたしというものがめぐり合っている人間的仕合わせの全延長について、昨夜はくりかえしくりかえし思い及び、人間の質について沈思し、感動をとどめ得ませんでした。
生活の真面目さと、浅薄さとの相異がどんなに大きいものかということは、平常人が考えているより遙かに巨大ですね。
この手紙ぐらい、思うままに表現出来ない感じの手紙はこれ迄書いたことがないようです。