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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

こういう紙の使いかたは、もう昨今では玄人(書くということについてのよ)しかしない贅沢に近づいて来ました。

十月一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

九月三十日

いま夕方の五時。うちにとって、極めて興味ある歴史的アントラクトの時間です。というのは、きょう、博物館から国宝鑑定専門の人が来て、うちの陶器の蒐集の鑑定をして居ります。そちらにかかり、わたしは、さっきまで限りない古い箱の整理に埃まびれとなり、一寸腰かけておイモたべ休んでいるところです。

わたしの荷物を運んだ男が、すこしまとめて荷を動かす方法を見つけそうなので、咲が上京し、家具の必要品を送るについて、その費用の捩出かたがた、この際大整理を敢行しようということになりました。日頃云って居たことがやっと実現した次第です。きょうは1/3ばかりのものを並べました。が、わたしは並べられたものを見て、一種云うに云えない感想にうたれました、それは自分の父親の人柄についての好意と満足です。

父の蒐集は決して茶人の渋さでもないし、所謂蒐集家の市価を念頭においての財産でもなく、本当に趣味なのね。陶器のサンプルとして純粋なものを、所謂ヒビの入っているにかかわらず買っていて、通人達の標準から見れば筋の通ったやすものを、平気でもっています、そしてね、鍋島とか柿エ