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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
11 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页
そうでしょう?
一組のものが、どれ程の過程を経て真の一組となりゆくか、それを思うと、結婚などという字は、かよわい一画一画がくずれて、今は不用となった或時期までが足場の木のように思えます。
十二月十六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十二月三日
もう十二月ね、今年があと二十八日で終ると思うと愕ろかれる心もちです。時間的に外からだけ見ると、時が経つのも分らないという位の遑しさであったとも云えますが、一歩深みを眺めやると、時間に詰めこまれた人間生活の歴史の立体的容積と動きとに又新しく愕ろかれるようです。実に忙しかったけれども、決して決してかけ足で通って左右のものが目にも映らなかった年ではありませんでした。その点では寧ろ歩武堂々たるものがありました。そしてわたしも、去年はもたなかった道を歩きその豊富な展望をたのしむことが出来、それはしんからうれしいことね。しんからしんからうれしいことです。二十二日のお手紙ありがたくくりかえしよみました。
疲れていらっしゃる夜、待っていたというのは、偶然ながら可愛いところがあります。横へおいてついうとうとなさったのね、気がついて目がおさめになったとき、其はやっぱりそこにいたことでしょう。