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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

11 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 174,521 字 · 344 页

青空文庫

出征ではないけれども、字ばかりひねって四十になった人が、キカイを習うというのは、やはり改った事と思って細君と赤ちゃん一緒によびました、赤ちゃんが人工営養で、ゆっくり出来ないと云っているうちに公衆電話がきれてしまったの、五銭きりもっていないんだけれど、というところで。だからもしかしたら来るかと思ったので、炭をはずんだところ来ず、わたしが珍しい納りかたとなりました。机とかぎの手に、二月堂机をおいて。大したもので、お正月のようです、膝にも毛布かけて。その毛布たるやわたしが生れて百日目に札幌へゆくときくるまれて行ったという年功ものですが、なかなか暖いのよ、まだ。

今年は、二日の手紙にかいたように昨年と暮しかたを変えて、自分の線をはっきりさせて生活しようと考えています、そのためにたとえばきょうにしろ、こうやって二階に落付いていられるのはうれしいの、そういう気分になれている自分がうれしいのよ。国咲は国府津へ行っていません。先なら気がもめてくしゃくしゃしたのに。生活の責任というものをどう考えているのかと思ったりして。Tも赤倉まで行って甘酒しるこも食べて、雪をすべってかえって来る位なんだから、こちらでこせこせ気をもむがものはないと思って。