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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
わたしは、三つ迄札幌の農大の中で育ったし二十代には永く逗留してあちこち旅行もし宮部金吾さんや総長だった佐藤さんとおなじみでしたが、この頃の様子はすっかり変ったし自分の条件も変化して居りますから、やっぱり話のわかりいい筋の紹介が入用でしょう。
どこに暮すのか、珍しく又茫漠とした感じです。でも北海道は、いいわ。結局は一番ようございましょう。暮しいいでしょう。スケールの大きい生活だけに暮しいいと思います。
そちらはわたしの覚えではからりとして虫の少いところですが、いかが? 痒いことの少い夏をお過しになれたらと思います。皮膚もサラリとした感じでしょう? そして、又今は白夜でしょうか、もう過ぎましたろうか、それともその辺は違うかしら。わたしたちの生活図譜も時様々ところ様々にくりひろげられて、風景の多様さから云ってもなかなか大したものねえ。大きい歴史の時期に殆ど壮大な風景の中で過すということは。何か内部的な調和さえあります。
わたしたちの眉宇はかくていよいよ晴れやかなりと申せます。
実際今年に入ってはじめて安心とはこういうものか、と思うようなこころもちよ。どんなに安心したでしょう。