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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

七月二日には巣鴨へ行こうと計画して居りました。二十八日かに、開成山から使のついでに返送されて来た手紙(十六日に出した方)が来ました。はじめ切手不足だったのかしらと何心なく見ていたらそちらに移送とあるでしょう。まアとぽけんといたしました。二日に、二日にと思って心の首をのばしていたでしょう、ですからのめるような風で。気がぬけたようになりましたが一晩経ったら、よかったという心もちがはっきりして来ました。中途半端でないのがいいのでしょうと思ってね。さて、それなら自分も行くのだが、北海道、北海道、いくら考えても目に浮ぶのは札幌のアカシヤの並木や美しい植物園の緑の風景、父の建てた道庁や大学の姿です。そちらの方はブランクなのよ。本当に変な遠い遠い気もちがいたしました。それから地図を出してよくよく眺め、人にきき、紹介貰いに歩いているうちに、そちらの町もリアリティーをもって来たし自分のゆくこともたしかに納得されて来て、もう大丈夫よ。一人でゆくのが大変ですが、さりとて適当なおともも見つかりませんでしょう。ごく簡単な荷物で、能率的に組合わせて身軽に参りましょう。そう云っても寒いところに行くのだからかさばるわねえ。