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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

12 一九四五年(昭和二十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页

青空文庫

ひどい丈夫の皮膚に特別ポンプがついているのかもしれないわ。

余り体が痛く湯たんぷはないし、ふと考えてさっき太郎に井戸の水を運んでもらってタライに湯をとって脚湯いたしました。すこし循環が整うだろうと思って、案の定、その手当の程度にふさわしい効果はありました。脚はいくらか爽やかとなり、頭脳も活溌になったので、忽然として、この開成山南町なる溜池のガスについて反省いたしました。「やってみること」何でも。そこで思いついて市次郎という先代からの爺さまの家の渋湯に明日から入れてもらうことにし、三四日うちに元気になって東京へはせ戻り、さて網走りまで出発いたします。わたしは臂力が足りないし疲れているから、つい男をたのんで国男にいくらかは動いてほしいと思うのですが、この人はいつか申し上げたかしら、イギリスの紳士よ。実に泰然たるものです。腹が分らない。ぐるりが動いて来てそこに出た状況で最も自分に有利な方に動くという、粘着力百パーセントの人物です。面白いわね。その国男に、この二月――七月間は私はこまかい収支帳をつくらないでおしとおし「さぞ辛棒だろうけれど御免ね。入金はしれきっているのだしわたしの努力でとにかくもち出した必要品はその幾百倍なんだから」