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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
12 一九四五年(昭和二十年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,583 字 · 240 页
今年の正月は、全くわたしもすがすがしい気分が主潮をなしていて、清朗であり、そこに光りもとおして居りますけれど、思えば思えば御苦労さま、というところもひとしおで、そのすがすがしい清朗さに、云うに云えないニュアンスを優しく愁わしく添えて居ります。こんな風にして、わたしたちの清朗さも、単に穢れなき浄潔から益※(二の字点、1-2-22)人間的滋味を加え、わたしたちの人生から滴るつゆは、益※(二の字点、1-2-22)人間生活の養いとなりまさるのでしょう。その肌に立つ一つ一つの鳥肌が、アナトール・フランスならば、真珠というでしょう。わたしの手や腕が、こんなにひびだらけになり、踵の赤ぎれが痛くてびっこ引いて居りますが、それも生活の赤き縫いとり飾りだと思ってね。赤い糸の、こまかいびっちりの十字繍いなんかそうざらにはないわ。ほめて頂戴。でも、原始の人たちの生活のように春を待ちますね。動物はどんな気もちで春を待つのでしょう。
昨日、いつもお正月にお目にかける寄植の鉢をたのめました。すこし時おくれですが、其でもやがて小さい梅の花も咲き福寿草も開くでしょうと思って。ささやかな眺めとして、ね。