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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
03 一九三六年(昭和十一年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,453 字 · 101 页
そのことはなかなか観察すべきです。彼等は、其々、自分の持っているものの中で働いて、生涯を終った。旧いもちものを脱ぎすてて新しいみのりへまで動く必然を感じず(漱石)感じてもそれを放棄の形で肯定した(芥川)。
作家が永い生涯の間で何度発展をとげるか、そしてその時にどの位作品をのこしてゆくか、これは大なる研究に値し、作家必死の事柄です。「四十年」の大作でクリムの性格は発展的に描かれていなかった。発展しない時期の作者はそれを描き得たが、一躍した後、それが書きつづけられなかった。これも深甚な興味があります。自分のこととして、今これから大長篇を書くことの出来るのをうれしく思います。それは必ず貫徹し得るから。まことに生活の結晶であるから。――
林町の生活について以前二十枚近く書いたことがありました。ではこの次の手紙(近々かきます)はその分だけにいたしましょう。
私へのおまじないをありがとう。むしがれいはそろそろたべられるけれど、チーズどうかしら。私は咲枝に「ホラ、こうかいてある御馳走をし……」と笑いました。今日島田へ達治さんのかえったお祝いをかきました。きょうは柔かく暖い日。