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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
それを今日三年ぶりであけようとしたら(引出し)狂ってしまっていてあかない。広間のテーブルが夏なので室の中にタテに置いてある。あの大ソファは炉に背を向けてTの字に。そのテーブルのところでこれを書き、又仕事もするつもりです。私は大変意気地がなくてわるいが、全くこの間うち少し病気のようになりました。例えば、ああこの風に一緒にふかれたい。そういう感情と、ああこれをたべさせて上げたい、ああこの風に吹かせてあげたい、そう思うのとでは感情のニュアンスが実に実にちがう。ああこの風に一緒に、だと私の目の中にもう一つ目ありのくちで、風よ我らを共に吹けでどこへでもスースー行って平気だが、吹かせて上げたいとなると、もう何だか涼しくても切ない、美味くても切ないでね。だから病気のようになる。そして、おお畜生、自分が病気の方が楽だと思って呻る。
でも、私は又もう一つ勇気を起して、この切ない心持もちゃんと持って身につけて、平静な明るさをとり戻しますから、どうか御安心下さい。ここに月末までいて、すこし神経を休めたらいいでしょう。よく働いたも働いたし。この次手紙を下さるときどうかユリのこの心持におまじないをして下さい。