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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

04 一九三七年(昭和十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页

青空文庫

十時頃までウトウトしていて、寝台が出来たので五時間ばかりよく眠りました。馴れたのでこの前より近いように思います。島田でびっくりなさいましょう。

十月十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県熊毛郡島田村より(封書)〕

よく晴れたお天気。今お父さんはお休み中。多賀ちゃんがおひるの支度をしている。お母さんはどこへかお姿が見えない。私は店で新聞をよんでバットを一つ売って、今上ってきてこれを書いているところ。

きのう八時四十何分かについて、改札のところを見たら多賀ちゃんがでていました。小さいトランクと中村屋のおまんじゅうを入れた風呂敷包みとをもって出たら、きょうは防空演習だからといって、いきなり自動車にのせられてしまった。達ちゃん、消防の服装(ポンプの小屋へ)で出ていたそうです。ちっともわからなかった。

お父さんは大よろこびでいらっしゃいます。思ったよりいい顔の色をしていらっしゃるし、舌が実にきれいでびっくりするようです。夏は何しろひどい暑気だったので心臓が苦しくおなりになったそうですが、今は御飯も大きいお茶碗に二つ(おかゆ)をあがります。間食はなさらず。春のときからみると、お体は軽くおなりになったし、気分も自発的なところが大分減っていらっしゃいます。